逆流性食道炎の疑いで消化器内科(胃腸科)を受診した場合、まず医師は患者さんから詳しい症状の聞き取り(問診)を行います。胸焼けや呑酸の頻度や程度、どのような時に症状が悪化するか、食事内容、生活習慣(喫煙、飲酒、就寝前の食事など)、既往歴、服用中の薬などについて詳しく尋ねられます。これらの情報は、診断の手がかりとなるだけでなく、治療方針を決定する上でも重要です。次に、診断を確定し、食道の炎症の程度を評価するために、最も重要な検査である「上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)」が行われることが一般的です。内視鏡検査では、細いカメラを口または鼻から挿入し、食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察します。逆流性食道炎の場合、食道下部に発赤、びらん、潰瘍などの炎症所見が見られることがあります。また、内視鏡検査は、食道がんや胃がん、食道裂孔ヘルニア(胃の一部が胸腔内にはみ出す状態)など、他の疾患との鑑別にも不可欠です。必要に応じて、組織の一部を採取して病理検査(生検)を行うこともあります。内視鏡検査が難しい場合や、スクリーニングとして行われる検査には「食道造影検査(バリウム検査)」もありますが、軽度の炎症は捉えにくいため、確定診断には内視鏡検査が優れています。治療の基本は、「薬物療法」と「生活習慣の改善」の二本柱です。薬物療法では、胃酸の分泌を強力に抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)や、それよりやや効果の穏やかなH2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)が主に用いられます。これらの薬は、食道の炎症を抑え、胸焼けなどの症状を改善する効果が高いです。その他にも、食道の運動機能を改善する薬や、胃酸を中和する制酸薬、食道粘膜を保護する薬などが症状に応じて併用されることもあります。生活習慣の改善としては、食事内容の見直し(脂肪分の多い食事や刺激物を避ける、食べ過ぎないなど)、食後すぐに横にならない、就寝時に上半身を少し高くする、禁煙、節酒、肥満の解消、ベルトをきつく締めすぎない、前かがみの姿勢を避ける、といった指導が行われます。これらの治療を組み合わせることで、多くの場合は症状の改善が期待できますが、治療は長期にわたることもあり、医師の指示に従って根気強く続けることが大切です。