血尿には、排尿時痛や腹痛、背部痛といった痛みを伴うものと、全く痛みを伴わないものがあります。一般的に、痛みを伴う血尿は尿路感染症や尿路結石などが原因であることが多いのに対し、「痛みのない血尿」、特に肉眼で確認できる血尿は、泌尿器系のがん(膀胱がん、腎がん、腎盂がん、尿管がんなど)の重要なサインである可能性があり、特に注意が必要です。もちろん、痛みのない血尿の全てががんというわけではありません。良性の腎嚢胞からの出血や、ナットクラッカー現象、あるいは特発性腎出血(原因が特定できない腎臓からの出血)など、が以外の原因も考えられます。しかし、がんの可能性を否定するためには、専門医による精密検査が不可欠です。例えば、膀胱がんの最も一般的な初期症状は、痛みを伴わない間欠的な肉眼的血尿です。血尿は一度きりで止まってしまうこともあり、「治った」と自己判断して受診が遅れるケースも少なくありません。しかし、その間にがんは進行している可能性があります。腎がんや腎盂・尿管がんも、初期には自覚症状が乏しく、血尿が最初のサインとなることがあります。これらの泌尿器系のがんは、早期に発見し、適切な治療を開始すれば、治癒する可能性も高まります。逆に、発見が遅れると、がんが進行・転移し、治療が難しくなったり、生命に関わる事態になったりすることもあります。したがって、痛みのない血尿に気づいたら、「様子を見よう」と放置せずに、速やかに泌尿器科を受診することが極めて重要です。泌尿器科では、尿検査、血液検査、超音波検査、CT検査、MRI検査、そして膀胱鏡検査などを行い、血尿の原因を徹底的に調べます。特に膀胱鏡検査は、膀胱内を直接観察できるため、膀胱がんの診断には欠かせない検査です。もし、がんが見つかった場合でも、早期であれば内視鏡手術や腹腔鏡手術といった、体への負担が少ない治療法で治癒を目指せることもあります。血尿は体からの重要な警告サインです。特に「痛くないから大丈夫」という考えは禁物です。自己判断せず、専門医の診察を受け、原因を明らかにすることが、自身の健康を守るために最も大切なことです。
痛みのない血尿は危険?がんの可能性と早期受診の重要性