逆流性食道炎の治療は、症状の改善と食道の炎症の治癒を目指して行われますが、その治療期間は患者さんの症状の重症度や生活習慣、合併症の有無などによって異なります。一般的には、まず薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせた初期治療が行われます。薬物療法の中心となるのは、胃酸の分泌を強力に抑える「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」です。PPIは、食道の炎症を鎮め、胸焼けなどの自覚症状を改善する効果が非常に高く、通常は4週間から8週間程度の服用で多くの患者さんで症状の改善が見られます。食道の炎症が強い場合や、症状がなかなか改善しない場合には、さらに長期間の服用が必要になることもあります。PPIよりも胃酸分泌抑制効果がやや穏やかな薬剤として「H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)」もあります。軽症の場合や、PPIの副作用が懸念される場合などに用いられることがあります。その他にも、症状に応じて様々な薬剤が併用されることがあります。例えば、食道の運動機能を改善し、胃からの内容物の逆流を抑える効果を期待して「消化管運動機能改善薬(蠕動運動促進薬)」が使われることがあります。また、胃酸を直接中和して速やかに症状を和らげる目的で「制酸薬」が頓服として処方されたり、荒れた食道粘膜を保護する目的で「食道粘膜保護薬」が用いられたりすることもあります。薬物療法で症状が改善した後も、自己判断で薬を中止すると再発する可能性が高いため、医師の指示に従って維持療法を行うことが重要です。維持療法では、PPIの量を減らしたり、間欠的に服用したり、あるいはH2ブロッカーに変更したりするなど、患者さんの状態に合わせて調整されます。中には、年単位での長期的な薬物療法が必要となる方もいます。薬物療法と並行して、食事療法や就寝時の工夫、禁煙、節酒といった生活習慣の改善を継続することも、再発予防のためには不可欠です。治療期間や薬の種類については、自己判断せず、必ず医師とよく相談し、指示に従うようにしましょう。