それは、朝の洗面所での出来事でした。顔を洗おうと腰をかがめ、ふっと顔を上げた瞬間に、目の前が真っ暗になったのです。壁に手をついて辛うじて倒れずに済みましたが、心臓の鼓動が耳元で激しく鳴り響き、冷や汗が止まりませんでした。これまでも軽い立ちくらみはありましたが、ここまでの恐怖を感じたのは初めてでした。私はその日のうちに、重い足取りで近所の内科病院へ向かいました。診察室で先生にこれまでの経緯を話すと、まずは血液検査を行いましょうということになりました。私は勝手にひどい貧血だと思い込んでいましたが、数日後に出た結果は意外にも正常でした。鉄分も不足しておらず、内臓の数値も綺麗だというのです。ではなぜ、あんなに激しい立ちくらみが起きたのか。先生は私の不規則な生活習慣や、仕事のストレスによる自律神経の乱れを指摘されました。その後、私は起立試験という検査を受けるために、少し大きな規模の病院を紹介されました。横になった状態と立ち上がった状態での血圧の変化を測る試験です。そこで判明したのは、起立性低血圧という診断でした。立ち上がった時に血圧が適切に維持されず、脳に血が行き届かなくなっていたのです。原因がはっきりしたことで、私の不安は少しずつ解消されていきました。病院からは、血圧を安定させるための生活指導を受けました。朝起きたらまずコップ一杯の水を飲むこと、弾性ストッキングを履いて下半身の血流をサポートすること、そして何より、ゆっくりと動作を行うこと。これらを意識し始めてから、あの恐ろしい暗闇に襲われることはなくなりました。もしあの時、病院へ行かずに気のせいだと片付けていたら、私は今もいつ倒れるか分からない不安の中で過ごしていたでしょう。病院は、病気を見つける場所であると同時に、自分の身体との付き合い方を教えてくれる場所でもありました。立ちくらみという小さなサインを見逃さず、勇気を出して受診したことが、今の私の穏やかな日常に繋がっています。
私が立ちくらみの原因を突き止めるために通った病院の記録