おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、主に子どもの頃にかかることが多いウイルス性の感染症ですが、実は大人もかかることがあります。そして、大人がおたふく風邪にかかると、子どもに比べて症状が重くなったり、合併症のリスクが高まったりする傾向があるため、注意が必要です。では、大人がおたふく風邪にかかった場合、どのような特徴的な症状が現れるのでしょうか。まず、最も代表的な症状は、耳下腺(耳の前下にある唾液腺)の腫れと痛みです。片側だけが腫れることもあれば、両側が腫れることもあり、腫れは耳の下から顎のラインにかけて、おたふくの面のように広がります。この腫れは、通常、発症後1~3日目にピークを迎え、1週間から10日程度で徐々に引いていきます。腫れている部分は、押すと痛んだり、熱感があったりします。食事や唾液の分泌を促すような酸っぱいものを食べると、痛みが強くなるのが特徴です。次に、発熱もよく見られる症状です。38度以上の高熱が出ることが多く、倦怠感や頭痛、食欲不振といった全身症状を伴うことも少なくありません。これらの症状は、子どもよりも大人の方が強く現れる傾向があります。また、顎下腺(顎の下にある唾液腺)や舌下腺(舌の下にある唾液腺)も同時に腫れて痛むことがあります。そして、大人がおたふく風邪にかかった場合に特に注意が必要なのが、合併症です。代表的なものに、無菌性髄膜炎、精巣炎(睾丸炎)、卵巣炎、膵炎、難聴などがあります。これらの合併症は、子どもよりも大人の方が発症頻度が高いとされています。特に、思春期以降の男性が罹患した場合の精巣炎は、高熱と陰嚢の強い痛みを伴い、不妊の原因となる可能性も指摘されています。このように、大人ののおたふく風邪は、単なる「子どもの頃にかかる軽い病気」とは異なり、つらい症状や合併症のリスクを伴うことを理解しておくことが大切です。