味覚障害が疑われる場合、医療機関ではどのような流れで診断が行われ、どのような検査が必要になるのでしょうか。そのプロセスを理解しておくと、安心して受診できるでしょう。まず、医療機関(主に耳鼻咽喉科や内科など)を受診すると、医師による詳しい問診が行われます。いつから、どのような味覚の異常(味がしない、味が薄い、特定の味が分からない、何を食べても苦い、金属のような味がするなど)があるのか、症状の程度や経過、他に症状(嗅覚障害、鼻づまり、口の渇き、舌の痛み、体重変化、全身倦怠感など)はあるか、最近風邪をひいたり、ケガをしたり、歯科治療を受けたりしなかったか、服用している薬(市販薬やサプリメントも含む)、既往歴(特に糖尿病、腎臓病、肝臓病、甲状腺疾患、がん治療歴など)、生活習慣(喫煙、飲酒、食事内容、ストレス状況など)を詳しく聞かれます。この問診は、味覚障害の原因を推測する上で非常に重要な情報となります。次に、身体診察です。医師は、口腔内や舌の状態(乾燥、炎症、白苔、潰瘍、舌乳頭の萎縮など)、鼻腔内の状態、そして必要に応じて全身状態を診察します。これらの問診と診察から、ある程度の原因の方向性がつけられますが、味覚障害の有無や程度、種類を客観的に評価するために、いくつかの検査が行われます。代表的な検査が、「味覚検査」です。これにはいくつかの方法がありますが、一般的に行われるのは「電気味覚検査(EGM)」と「ろ紙ディスク法(濾紙ディスク法)」です。電気味覚検査は、舌の表面に微弱な電流を流し、金属味を感じる最小の電流値を測定することで、味覚神経の機能を評価します。ろ紙ディスク法は、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の五つの基本的な味質の溶液を染み込ませた小さなろ紙を舌の上に置き、それぞれの味を正しく認識できるか、またどのくらいの濃度で認識できるかを調べる検査です。これらの味覚検査によって、味覚障害の有無、障害されている味質、そして障害の程度が客観的に評価されます。また、味覚障害の原因を探るために、「血液検査」も重要な検査の一つです。亜鉛や鉄といった微量元素の欠乏、糖尿病、腎機能障害、肝機能障害、甲状腺機能異常、炎症反応などを調べます。必要に応じて、嗅覚検査や画像検査(CTやMRIなど)が行われることもあります。