食中毒が疑われる場合、医療機関ではどのような流れで診断が行われ、どのような検査が必要になるのでしょうか。そのプロセスを理解しておくと、安心して受診できるでしょう。まず、医療機関(主に内科や消化器内科など)を受診すると、医師による詳しい問診が行われます。これが食中毒の診断において非常に重要なステップとなります。医師は、以下の点について詳しく聞き取ります。いつから、どのような症状(腹痛、下痢、嘔吐、発熱、血便など)があるのか。症状の程度や頻度、持続期間。症状が現れる前に、何を、いつ、どこで、どのくらい食べたか(特に、生ものや加熱不十分なもの、作り置きの料理など)。他に同じものを食べた人で、同様の症状の人はいるか(集団発生の可能性)。海外渡航歴や、ペットとの接触歴。既往歴(特に消化器系の病気や免疫力の低下する病気など)、服用中の薬。これらの情報を総合的に評価し、食中毒の可能性や、原因となっている可能性のある食品や病原体を推測します。次に、身体診察が行われます。腹部の聴診(腸の音の確認)や触診(お腹を押さえて痛みの場所や程度、張りなどを確認する)、体温測定、血圧測定などが行われます。脱水症状の兆候(口の中の乾燥、皮膚の弾力性の低下、頻脈など)がないかも重要なチェックポイントです。これらの問診と診察から、食中毒の可能性が高いと判断された場合、原因を特定するためにいくつかの検査が行われることがあります。最も一般的に行われるのが、「便培養検査」です。便を採取し、その中に食中毒の原因となる細菌(サルモネラ菌、カンピロバクター、O-157などの病原性大腸菌、腸炎ビブリオなど)が存在するかどうかを調べます。結果が出るまでに数日かかることがあります。ウイルス性の食中毒(ノロウイルスやロタウイルスなど)が疑われる場合は、便を用いた迅速抗原検査が行われることもあります。また、「血液検査」も、炎症反応(白血球数やCRPなど)の程度や、脱水の有無(電解質バランスや腎機能など)を調べることで、全身状態を評価するのに役立ちます。これらの検査結果と、問診や診察所見を総合的に判断し、医師は食中毒の診断を下し、適切な治療方針を決定します。
食中毒診断までの流れと主な検査内容