大人のADHDの診断は、単一の検査だけで行われるものではなく、多角的な情報に基づいて総合的に判断されます。子供の頃の様子も含めた詳細な生育歴の聴取、現在の困りごとや症状の確認、心理検査、そして他の精神疾患や身体疾患との鑑別が重要なプロセスとなります。まず、医師による「問診」が非常に重要です。現在の日常生活や仕事でどのような困難を感じているか(不注意、多動性、衝動性に関連する具体的なエピソード)、いつ頃からそれらの特性が目立っていたか、子供の頃の学校生活や家庭での様子(通知表の所見や親からの話など)について詳しく聞き取られます。可能であれば、子供の頃の様子をよく知る家族(親など)から情報を得ることもあります。また、ADHDの診断基準(DSM-5など)に基づいて、症状の項目にどの程度当てはまるかを確認します。次に、客観的な評価のために「心理検査」が行われます。これには、知能検査(WAISなど)や、注意機能や実行機能を評価する検査(CAT、CPTなど)、パーソナリティ検査などが含まれることがあります。これらの検査は、ADHDの特性の程度や、併存する可能性のある他の発達障害や学習障害、精神疾患の有無などを評価するのに役立ちます。また、自己記入式の質問紙(CAARS、ASRSなど)を用いて、ADHDの症状の自己評価を行うこともあります。さらに、ADHDの症状は、うつ病や双極性障害、不安障害、パーソナリティ障害といった他の精神疾患の症状と重なる部分があるため、これらの疾患との「鑑別診断」が重要になります。また、甲状腺機能異常などの身体疾患が、集中力の低下や気分の変動を引き起こすこともあるため、必要に応じて血液検査などが行われることもあります。これらの問診、心理検査、他の疾患との鑑別などを通じて得られた情報を総合的に評価し、医師がADHDの診断を下します。診断には数回の受診が必要になることもあります。大切なのは、焦らず、医師とよくコミュニケーションを取りながら、正確な診断を目指すことです。