甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が不足することで、全身の代謝が低下し、様々な身体的・精神的な症状が現れる病気です。その症状は、ゆっくりと進行することが多く、また、他の病気や単なる体調不良と間違われやすいため、気づきにくいこともあります。どのような症状に注意すれば良いのでしょうか。主な症状を理解しておきましょう。まず、全身の代謝が低下するため、以下のような症状が見られます。「疲労感・倦怠感」:体がだるく、疲れやすくなり、十分な睡眠をとっても疲れが取れない感じがします。気力や意欲も低下しやすくなります。「寒がり・冷え性」:体温調節がうまくいかず、人よりも寒さを感じやすくなったり、手足が冷えたりします。「体重増加」:食事量は変わらない、あるいはむしろ減っているのに、体重が増えてくることがあります。これは、基礎代謝が低下し、エネルギー消費量が減るためです。また、体内に水分が溜まりやすくなることも影響します。「むくみ(浮腫)」:顔(特にまぶた)や手足、全身がむくみやすくなります。押しても跡が残りにくい、特徴的なむくみ(粘液水腫)が見られることもあります。「便秘」:腸の動きが悪くなり、便秘がちになります。次に、皮膚や毛髪、爪にも変化が現れることがあります。「皮膚の乾燥・カサつき」:汗をかきにくくなり、皮膚が乾燥してカサカサしたり、硬くなったりします。「脱毛・眉毛の外側が薄くなる」:髪の毛が抜けやすくなったり、眉毛の外側3分の1が薄くなったりすることがあります。「爪がもろくなる・割れやすい」:爪が薄く、もろくなり、割れやすくなります。また、精神神経系の症状として、「記憶力・集中力の低下」:物忘れが多くなったり、注意力が散漫になったりします。「気分の落ち込み・抑うつ気分」:無気力になったり、気分が沈み込んだりすることがあります。「眠気」:日中でも強い眠気を感じることがあります。その他、「声のかすれ・低い声」、「徐脈(脈が遅くなる)」、「月経異常(過多月経や無月経など)」、「筋肉痛・関節痛」、「コレステロール値の上昇」なども、甲状腺機能低下症の症状として現れることがあります。これらの症状は、全ての人に同じように現れるわけではなく、症状の種類や程度には個人差が大きいのが特徴です。