血尿は様々な原因で起こり得ますが、その多くは泌尿器科領域の疾患に関連しています。代表的な原因疾患をいくつかご紹介します。まず、比較的頻度が高いのが「尿路感染症」です。膀胱に細菌が感染して炎症を起こす「膀胱炎」では、頻尿や排尿時痛、残尿感とともに血尿が見られることがあります。腎臓にまで感染が及ぶ「腎盂腎炎(じんうじんえん)」では、高熱や背部痛、悪寒戦慄といった全身症状を伴う血尿が特徴です。次に、「尿路結石症」も血尿の一般的な原因です。腎臓や尿管、膀胱に結石ができると、尿路の粘膜を傷つけて出血を引き起こします。特に尿管結石では、突然の激しい腰背部痛(疝痛発作)とともに肉眼的血尿が出現することが多いです。腎臓自体の病気としては、「腎嚢胞(じんのうほう)」という腎臓に液体がたまった袋ができる良性の病変が、大きくなったり出血したりすると血尿の原因となることがあります。また、遺伝性の「多発性嚢胞腎」でも血尿が見られることがあります。そして、最も注意が必要なのが「泌尿器系のがん」です。「膀胱がん」は、痛みを伴わない肉眼的血尿が最も重要なサインとされており、喫煙者に多い傾向があります。「腎がん(腎細胞がん)」も、初期には症状が出にくいですが、進行すると血尿や腹部のしこり、腹痛などが現れることがあります。「腎盂がん」や「尿管がん」も、血尿を主症状とすることが多いがんです。これらの悪性腫瘍は、早期発見・早期治療が非常に重要であるため、血尿が見られたら放置せずに検査を受けることが大切です。その他にも、前立腺の病気(前立腺肥大症や前立腺がん、前立腺炎など)が原因で血尿が出ることや、激しい運動後に一時的に血尿が見られる「運動後血尿」、あるいは外傷によって尿路が損傷した場合にも血尿が起こり得ます。このように、血尿の原因は多岐にわたるため、専門医による正確な診断が不可欠です。