体にできる「こぶ」や「しこり」として、脂肪腫と並んでよく見られるのが「粉瘤(ふんりゅう)」、または「アテローム」とも呼ばれるものです。どちらも良性の皮下腫瘍ですが、その成り立ちや特徴、そして治療法には違いがあります。これらの違いを理解しておくことは、適切な対応に繋がります。まず、成り立ちですが、脂肪腫は、成熟した脂肪細胞が異常に増殖してできる腫瘍です。一方、粉瘤は、皮膚の表面の成分(表皮)が、何らかの原因(例えば、毛穴の詰まりや外傷など)で皮膚の下に入り込み、袋状の構造物(嚢胞:のうほう)を形成し、その袋の中に垢(角質)や皮脂といった老廃物が粥状(じゅくじょう:おかゆのような状態)になって溜まってできるものです。次に、触った感じや見た目の特徴です。脂肪腫は、通常、皮膚の下にできる境界が比較的はっきりとした、柔らかく弾力のある、可動性のあるこぶとして触れます。皮膚の表面の色は、通常、正常な皮膚の色と変わりません。一方、粉瘤は、皮膚のすぐ下にでき、半球状に盛り上がることが多く、触ると脂肪腫よりやや硬く感じられることがあります。また、粉瘤の中心には、しばしば黒い点(開口部、コメドとも呼ばれます)が見られるのが特徴です。この開口部を強く押すと、臭いのある粥状の内容物が出てくることがあります。症状については、脂肪腫は、通常、痛みはありません(ただし、大きくなって神経を圧迫すると痛むこともあります)。一方、粉瘤は、普段は無症状でも、細菌感染を起こすと、急に赤く腫れ上がり、強い痛みや熱感を伴い、化膿して膿が出ることがあります。これを「炎症性粉瘤」と呼びます。治療法も異なります。脂肪腫の治療の基本は、手術による摘出です。粉瘤も、根本的な治療は手術による袋(嚢胞壁)の完全な摘出ですが、炎症を起こしている場合は、まず抗生物質の内服や切開排膿で炎症を抑えてから、後日改めて袋を摘出する手術を行うことが多いです。どちらの腫瘍も、自己判断で無理に潰したり、いじったりするのは避け、気になる場合は皮膚科や形成外科を受診し、専門医の診断と適切な治療を受けるようにしましょう。