側頭動脈炎と診断され、ステロイド治療が開始された後、患者さんは日常生活においていくつかの点に注意して過ごす必要があります。これは、病気の再燃を防ぎ、ステロイドの副作用を最小限に抑え、治療効果を最大限に引き出すために重要です。まず、医師から処方されたステロイドは、指示された用法・用量を厳密に守って服用することが最も大切です。自己判断で薬の量を減らしたり、飲み忘れたり、中止したりすると、病気が再燃し、頭痛や視力障害などの症状が再び現れる可能性があります。特に、視力障害は不可逆的(元に戻らない)な場合もあるため、再燃の予防は極めて重要です。薬のことで不安や疑問があれば、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。次に、感染症の予防です。ステロイド治療中は免疫力が低下するため、風邪やインフルエンザ、肺炎などの感染症にかかりやすくなります。外出時にはマスクを着用し、帰宅時や食事前には手洗い・うがいを徹底しましょう。人混みを避け、体調の悪い人との接触もできるだけ控えるように心がけてください。定期的なワクチン接種(インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンなど)も、医師と相談の上で検討すると良いでしょう。また、ステロイドの副作用である骨粗鬆症を予防するために、カルシウムやビタミンDを多く含む食事を心がけ、適度な運動(ウォーキングなど、骨に負荷のかかる運動)を行うことが推奨されます。医師から骨粗鬆症治療薬が処方されている場合は、忘れずに服用しましょう。血糖値や血圧が上昇することもあるため、定期的な測定と、必要に応じて食事療法(塩分や糖分の制限など)を行うことが大切です。体重管理も重要で、ステロイドの副作用で食欲が増進し、体重が増加しやすい傾向があるため、食べ過ぎに注意し、バランスの取れた食事を心がけましょう。さらに、精神的なストレスも病状に影響を与える可能性があるため、十分な睡眠と休息を取り、リラックスできる時間を作ることも大切です。定期的な通院と検査を怠らず、医師とのコミュニケーションを密に取りながら、二人三脚で治療に取り組む姿勢が、側頭動脈炎との長い付き合いを乗り越えるための鍵となります。