逆流性食道炎の主な症状である胸焼けや胸痛は、他の様々な病気でも見られることがあるため、正確な鑑別診断が非常に重要です。自己判断で「逆流性食道炎だろう」と思い込んでしまうと、重大な疾患の発見が遅れる可能性もあります。まず、最も注意が必要なのは「心臓疾患」です。特に狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患では、胸の中央部や左胸に締め付けられるような痛みや圧迫感が生じることがあり、これが逆流性食道炎の胸痛と似ている場合があります。特に、運動時や興奮時に症状が出やすい、冷や汗を伴う、左肩や腕に痛みが放散するといった特徴があれば、心臓疾患の可能性を強く疑い、速やかに循環器内科を受診する必要があります。次に、「食道がん」も重要な鑑別対象です。初期の食道がんには自覚症状がないことも多いですが、進行すると食べ物がつかえる感じ、胸の違和感や痛み、体重減少などが現れることがあります。これらの症状は逆流性食道炎と共通する部分もあるため、内視鏡検査による詳細な観察と、必要に応じた生検が不可欠です。また、「アカラシア」という食道の運動機能障害の病気では、食道下部の括約筋が十分に緩まないために食べ物が食道に停滞し、胸のつかえ感や嘔吐、胸痛などが起こります。これも逆流性食道炎と症状が似ていることがあります。その他にも、「好酸球性食道炎」というアレルギー反応が関与する食道の炎症性疾患や、稀ですが「食道カンジダ症」などの感染性食道炎も、胸焼けや嚥下困難を引き起こすことがあります。胃の病気、例えば「胃潰瘍」や「十二指腸潰瘍」でも、みぞおちの痛みや胸焼けを感じることがあります。さらに、肺の病気(気胸、肺炎、胸膜炎など)や、胆石症、膵炎なども、胸部や上腹部に痛みを引き起こし、逆流性食道炎と間違われる可能性があります。ストレスや不安が原因で起こる「機能性ディスペプシア」や「非心臓性胸痛」といった病態も、胸焼けや胸痛の原因となることがあります。このように、逆流性食道炎と似た症状を呈する疾患は多岐にわたるため、自己判断は禁物です。消化器内科を受診し、適切な検査を受けて正確な診断を得ることが、適切な治療への第一歩となります。
逆流性食道炎と間違えやすい他の病気との鑑別