高齢者の足のむくみは、内科的な病気や血管のトラブルだけでなく、骨や関節、筋肉といった整形外科的な問題が関与していることもあります。どのような場合に整形外科の受診を検討すべきなのでしょうか。まず、変形性膝関節症や変形性股関節症といった関節の病気がある場合です。これらの病気では、関節の軟骨がすり減ったり、骨が変形したりすることで、関節に炎症が起こり、痛みや腫れ、動きの制限などが現れます。関節の炎症が強いと、その周囲の組織にも炎症が波及し、血行が悪くなったり、リンパの流れが滞ったりして、足のむくみが生じることがあります。特に、膝や股関節の痛みが強く、あまり足を動かさなくなると、筋肉のポンプ作用も低下し、むくみが悪化しやすくなります。次に、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)や腰椎椎間板ヘルニアといった腰の病気も、足のむくみに関連することがあります。これらの病気では、腰の神経が圧迫されることで、足にしびれや痛み、筋力低下といった症状が現れますが、同時に、自律神経の働きにも影響が及び、足の血行が悪くなってむくみが生じることがあります。また、痛みのために歩行量が減ることも、むくみの原因となり得ます。さらに、足関節捻挫や骨折といったケガの後遺症として、むくみが長期間残ることもあります。関節の不安定性や、周囲の組織の瘢痕(はんこん:傷跡)などが、血流やリンパの流れを妨げる原因となることがあります。その他、関節リウマチなどの炎症性関節疾患も、関節の腫れとともに、足全体のむくみを引き起こすことがあります。これらの整形外科的な問題が疑われる場合は、整形外科を受診し、レントゲン検査やMRI検査などで骨や関節、神経の状態を評価してもらうことが大切です。原因となっている病気の治療(薬物療法、リハビリテーション、装具療法、場合によっては手術など)を行うことで、痛みやしびれだけでなく、足のむくみの改善も期待できる場合があります。