足の裏、特にかかとや土踏まずのあたりに痛みを感じる場合、まず疑われるのが「足底筋膜炎(そくていきんまくえん)」です。これは、足の裏やかかと痛の最も代表的な原因疾患の一つと言えるでしょう。足の裏には、かかとの骨から足の指の付け根に向かって扇状に広がる「足底筋膜」という、強靭で弾力性のある腱様の膜組織があります。この足底筋膜は、足の縦アーチ(土踏まず)を弓の弦のように支え、歩行やランニング、ジャンプなどの際に地面からの衝撃を吸収し、また、蹴り出す力を効率よく伝えるバネのような重要な役割を担っています。しかし、この足底筋膜に、長時間の立ち仕事や、ランニングやジャンプといったスポーツによる繰り返しの負荷、あるいは硬い地面での運動、クッション性の悪い靴の使用、急激な体重増加、肥満、扁平足やハイアーチといった足の構造的な問題、ふくらはぎやアキレス腱の柔軟性の低下などが原因で、過度なストレスがかかり続けると、足底筋膜の付着部(特にかかとの骨に近い部分)に微細な断裂や炎症が生じ、痛みが発生します。これが足底筋膜炎です。足底筋膜炎の典型的な症状は、朝起きて最初の一歩を踏み出した時の強い痛みです。これは、寝ている間に足底筋膜が収縮した状態になり、急に体重がかかって引き伸ばされることで起こると考えられています。また、長時間座っていた後や、運動を始めた時にも同様の痛みが現れることがあります。しばらく歩いていると、痛みが和らいでくることもありますが、運動をしすぎたり、長時間立ち続けたりすると、再び痛みが強くなることもあります。痛む場所は、かかとの内側やや前方が最も多いですが、土踏まずや足の指の付け根に近い部分に痛みが出ることもあります。もし、これらの症状に心当たりがある場合は、整形外科を受診し、適切な診断と治療(安静、ストレッチ、インソール、薬物療法など)を受けることが大切です。