猩紅熱や溶連菌感染症が疑われる場合、医療機関では主に問診、身体診察、そして迅速検査や培養検査といった細菌学的な検査を組み合わせて診断が行われます。まず「問診」では、発症時期、発熱の程度、喉の痛みの有無や強さ、発疹の出現時期や性状、イチゴ舌の有無、家族や周囲での流行状況、過去の溶連菌感染歴などを詳しく聴取します。次に「身体診察」では、喉の奥(咽頭・扁桃)の状態を視診し、発赤や腫れ、白い膿(滲出物)の付着がないかを確認します。また、首のリンパ節の腫れや圧痛の有無、皮膚の発疹の性状(色、形、分布、触感など)、イチゴ舌の所見などを注意深く観察します。特に猩紅熱を疑う場合は、サンドペーパー様の皮膚、口囲蒼白、パスティア線、その後の膜様落屑の有無などが重要な手がかりとなります。これらの臨床所見から溶連菌感染症が強く疑われる場合、診断を確定するために「細菌学的検査」が行われます。最も一般的に行われるのが「迅速診断キット(迅速抗原検出キット)」を用いた検査です。これは、喉の奥を綿棒で擦って検体を採取し、数分から10分程度でA群β溶血性連鎖球菌の抗原の有無を調べる検査です。陽性であれば溶連菌感染症と診断できます。ただし、迅速検査は感度が100%ではないため、臨床的に強く疑われるにもかかわらず陰性だった場合には、「咽頭培養検査」を追加で行うことがあります。咽頭培養検査は、採取した検体を培地で培養し、溶連菌が増殖するかどうかを確認する検査で、迅速検査よりも感度が高いとされていますが、結果が出るまでに数日かかります。血液検査は通常必須ではありませんが、炎症反応(白血球数やCRPなど)の程度を確認したり、他の疾患との鑑別が必要な場合に行われたりすることがあります。また、ASO(抗ストレプトリジンO)価やASK(抗ストレプトキナーゼ)価といった抗体検査は、過去の溶連菌感染を示すものであり、急性期の診断にはあまり用いられませんが、リウマチ熱などの合併症を疑う場合に参考になることがあります。これらの情報を総合的に判断し、医師が診断を下します。