健康診断の尿検査で「潜血陽性」や「血尿」を指摘されたり、あるいは自分で尿に血が混じっているのに気づいたりした場合、それを放置することには様々なリスクが伴います。血尿は、単なる一時的な現象であることもありますが、重大な病気が隠れているサインである可能性も否定できません。放置することで最も懸念されるのは、治療が必要な疾患、特に悪性腫瘍(膀胱がん、腎がんなど)の発見が遅れてしまうことです。がんは、早期に発見し治療を開始すれば治癒する可能性が高まりますが、進行してしまうと治療が困難になったり、生命に関わる事態になったりすることがあります。痛みを伴わない血尿の場合、特に自覚症状が少ないために受診が遅れがちですが、これが最も危険なパターンの一つです。また、腎臓の病気(IgA腎症などの糸球体腎炎)が原因である場合、放置すると徐々に腎機能が低下し、将来的には慢性腎不全に至り、透析治療や腎移植が必要になる可能性もあります。尿路感染症や尿路結石が原因の場合も、適切な治療を受けずに放置すると、症状が悪化したり、腎機能障害を引き起こしたり、敗血症などの重篤な合併症に繋がったりすることがあります。では、血尿を指摘されたり、気づいたりした場合、日常生活でどのような点に注意すれば良いでしょうか。まず最も重要なのは、自己判断せずに速やかに医療機関(主に泌尿器科)を受診し、原因を特定することです。その上で、医師の指示に従い、適切な治療や生活指導を受けることが基本となります。日常生活においては、過度な飲酒や喫煙は、多くの場合、健康にとってマイナスであり、特に膀胱がんのリスク因子として喫煙は重要です。バランスの取れた食事を心がけ、十分な水分を摂取することも、尿路結石の予防や尿路感染症の再発防止に役立つ場合があります。ただし、腎機能が低下している場合には水分制限が必要なこともあるため、医師の指示に従いましょう。激しい運動は、一時的に血尿を悪化させることがあるため、原因が特定されるまでは控えた方が無難かもしれません。ストレスや過労を避け、十分な睡眠をとることも、体の免疫力を保つ上で重要です。しかし、これらの生活上の注意は、あくまで補助的なものであり、根本的な原因解決にはなりません。血尿というサインを見逃さず、専門医による適切な診断と治療を受けることが、将来の健康を守るために最も大切な行動です。