猩紅熱や一般的な溶連菌感染症の原因となるA群β溶血性連鎖球菌は、主に感染者の咳やくしゃみによって飛び散る飛沫(しぶき)を吸い込むことによる「飛沫感染」と、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れたり、汚染された物品(おもちゃ、タオル、食器など)を介したりして感染する「接触感染」によって広がります。特に、幼稚園や保育園、学校といった子供たちが集団で生活する場では、感染が広がりやすい傾向があります。潜伏期間は通常2~5日程度で、発症前から感染力があり、抗菌薬治療を開始して24時間以上経過するまでは感染力が持続すると考えられています。予防のためには、一般的な感染症対策と同様の注意が重要です。まず、最も基本的な予防策は「手洗い」と「うがい」の励行です。外出後や食事前、トイレの後などには、石鹸を使って流水で丁寧に手を洗いましょう。うがいは、喉の粘膜に付着した細菌を洗い流す効果が期待できます。次に、「咳エチケット」を守ることも大切です。咳やくしゃみをする際には、ティッシュやハンカチ、あるいは袖で口や鼻を覆い、周囲への飛沫の拡散を防ぎましょう。使用したティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、その後は手を洗います。感染者との濃厚な接触を避けることも予防に繋がります。流行期には、人混みを避けたり、体調の悪い人との接触を控えたりするなどの配慮が望ましいでしょう。また、感染者が使用したタオルや食器などを共用しないようにすることも重要です。おもちゃなども、こまめに消毒すると良いでしょう。家庭内に感染者が出た場合は、看護する人もマスクを着用し、こまめな手洗いを心がけると共に、部屋の換気を十分に行うことが大切です。現時点では、溶連菌感染症に対する有効なワクチンは開発されていません。そのため、上記のような日常的な感染予防策を徹底することが、自身や家族を感染から守るために最も効果的な方法となります。特に、免疫力の未熟な小さな子供がいる家庭では、周囲の大人が感染対策を意識することが重要です。
猩紅熱・溶連菌感染症の感染経路と予防策