側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎:GCA)は、しばしば「リウマチ性多発筋痛症(PMR)」という別のリウマチ性疾患と密接に関連していることが知られています。実際、側頭動脈炎の患者さんの約40~50%がリウマチ性多発筋痛症を合併し、逆にリウマチ性多発筋痛症の患者さんの約10~20%が側頭動脈炎を合併すると言われています。この二つの疾患は、発症年齢(主に50歳以上)、炎症反応(赤沈やCRPの高値)が共通しており、病態生理学的にも関連があると考えられていますが、完全に同一の疾患というわけではありません。リウマチ性多発筋痛症は、首、肩、腰、太ももなどの体の中心に近い部分の筋肉に、朝のこわばりや痛みが左右対称に現れることを特徴とする炎症性の疾患です。腕が上がりにくい、寝返りが打ちにくい、立ち上がりにくいといった症状が見られます。発熱や倦怠感、体重減少といった全身症状を伴うこともあります。側頭動脈炎とリウマチ性多発筋痛症が合併している場合、頭痛や顎跛行といった側頭動脈炎の症状と、肩や腰の痛みといったリウマチ性多発筋痛症の症状が同時に、あるいは時期をずらして出現することがあります。例えば、最初にリウマチ性多発筋痛症の症状で整形外科や内科を受診し、その後の経過で頭痛や視力障害が出現して側頭動脈炎が疑われるケースや、逆に側頭動脈炎の治療中にリウマチ性多発筋痛症の症状が現れることもあります。どちらの疾患も、診断には詳細な問診、身体診察、血液検査(炎症反応)などが重要となります。治療法も共通しており、ステロイド(副腎皮質ホルモン)が第一選択薬となります。比較的少量のステロイドで劇的に症状が改善することが、リウマチ性多発筋痛症の特徴の一つとされています。側頭動脈炎とリウマチ性多発筋痛症は、高齢者に発症する炎症性疾患として重要なものであり、これらの疾患を疑う症状が見られた場合は、リウマチ科(膠原病内科)などの専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
側頭動脈炎とリウマチ性多発筋痛症の関連性