側頭動脈炎の疑いでリウマチ科(膠原病内科)を受診した場合、専門医はまず詳細な問診と身体診察を行います。年齢、症状の出現時期と経過、頭痛の性質や部位、側頭部の圧痛の有無、顎跛行の有無、視力障害の有無、発熱や全身倦怠感、体重減少などの全身症状について詳しく聞き取ります。身体診察では、側頭動脈の拍動の減弱や消失、結節(こぶのようなもの)、圧痛などを確認します。次に、血液検査が行われます。側頭動脈炎では、赤血球沈降速度(赤沈またはESR)の著しい亢進や、C反応性タンパク(CRP)の高値といった強い炎症反応を示す所見が特徴的です。また、貧血や血小板増多が見られることもあります。これらの検査結果は、診断の補助となるとともに、治療効果の判定にも用いられます。確定診断のためには、「側頭動脈生検」が最も重要な検査とされています。これは、局所麻酔下に側頭動脈の一部(通常1~2cm程度)を採取し、病理組織学的に炎症所見(巨細胞の浸潤など)を確認する検査です。ただし、側頭動脈炎の炎症は動脈の全長に均一に存在するわけではなく、飛び飛びに病変が存在する(スキップリージョン)ことがあるため、生検で陰性であっても側頭動脈炎を完全に否定できない場合もあります。近年では、超音波検査(エコー検査)で側頭動脈壁の肥厚や「ハローサイン」と呼ばれる特徴的な所見を確認したり、MRIやPET-CTなどの画像検査が診断の補助として用いられたりすることもあります。診断が確定、あるいは強く疑われた場合、治療は速やかに開始されます。治療の主体は、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の大量療法です。プレドニゾロンなどのステロイド薬を比較的高用量で開始し、症状や炎症反応の改善を見ながら、数ヶ月から数年かけて徐々に減量していきます。ステロイドの減量が難しい場合や、副作用が懸念される場合には、免疫抑制薬(メトトレキサートやトシリズマブなど)が併用されることもあります。治療の目標は、炎症を鎮静化させ、視力障害などの重篤な合併症を防ぎ、症状をコントロールすることです。治療は長期にわたることが多いため、医師との密な連携と、根気強い治療継続が重要となります。