大人の喉の奥に熱を伴わない水ぶくれが見られる場合、いくつかの病気が考えられます。それぞれの特徴を理解しておくことは、過度な不安を和らげ、適切な受診行動に繋がります。まず、比較的よく見られるのが「粘液嚢胞(ねんえきのうほう)」です。これは、小さな唾液腺の管が詰まるなどして、唾液が袋状に溜まってできるものです。多くは透明感のあるドーム状の膨らみで、大きさは数ミリから1センチ程度。痛みはあまりなく、自然に破れて小さくなったり、再発したりを繰り返すこともあります。主に唇の内側や舌の下にできやすいですが、喉の奥にも発生することがあります。次に、「リンパ濾胞(ろほう)の腫脹・増殖」です。喉の奥の壁(咽頭後壁など)には、リンパ組織が集まった濾胞が無数に存在し、免疫の役割を担っています。風邪などの感染後や、慢性的な刺激(喫煙、後鼻漏など)によって、これらのリンパ濾胞が赤くブツブツと腫れ上がることがあります。一つ一つは小さいですが、多数集まるとイクラの粒が集まったように見えることもあります。これも通常、熱は伴わず、喉のイガイガ感や異物感を感じることがあります。また、「口内炎(アフタ性口内炎など)」が喉の奥にできることもあります。一般的な口内炎は、白い膜で覆われた浅い潰瘍で、周囲が赤く腫れ、痛みを伴います。水ぶくれとは少し見た目が異なりますが、初期段階や治りかけの状態で水ぶくれのように見えることもなくはありません。「ヘルパンギーナ」や「手足口病」は、夏風邪の代表的なウイルス感染症で、喉の奥に小さな水疱を多数形成します。これらは通常、高熱を伴いますが、解熱後も水疱が残っていたり、軽症で熱があまり出なかったりする場合には、熱のない水ぶくれとして認識されるかもしれません。その他、稀なケースとして、良性の腫瘍である「乳頭腫(にゅうとうしゅ)」がカリフラワー状の隆起として見えたり、ごく初期の「咽頭がん」や「喉頭がん」が粘膜の異常として捉えられたりする可能性もゼロではありません。これらは持続性があり、進行すると飲み込みにくさや声のかすれ、出血などを伴うことがあります。これらの病気は、見た目だけでは区別が難しいことも多いため、専門医による正確な診断が不可欠です。