脂肪腫が疑われる場合、医療機関ではどのような流れで診断が行われ、どのような検査が必要になるのでしょうか。そのプロセスを理解しておくと、安心して受診できるでしょう。まず、医療機関(主に皮膚科、形成外科、整形外科など)を受診すると、医師による詳しい問診が行われます。いつからこぶに気づいたか、こぶの大きさや硬さの変化、痛みやしびれ、動かしにくさといった他の症状の有無、過去に同様のこぶができたことがあるか、家族歴(特に多発性脂肪腫症など)、既往歴などを詳しく聞かれます。次に、視診と触診です。医師は、こぶの場所、大きさ、形、表面の皮膚の状態(色調変化や傷の有無など)、そして実際に手で触って、こぶの硬さ(柔らかいか、弾力があるか、硬いか)、可動性(周囲の組織とくっついているか、動くか)、圧痛(押したときの痛み)の有無などを確認します。脂肪腫は、通常、皮膚の下にできる境界が比較的はっきりとした、柔らかく弾力のある、可動性のあるこぶとして触れることが多いです。多くの場合、この問診と診察所見から、脂肪腫の可能性が高いと判断されます。しかし、診断を確定するためや、他の腫瘍(例えば、粉瘤、血管腫、神経線維腫、腱鞘巨細胞腫、稀には悪性腫瘍である脂肪肉腫など)との鑑別、あるいは脂肪腫の深さや周囲の組織(筋肉、血管、神経など)との関係を詳しく調べるために、画像検査が行われることがあります。最も手軽で有用な画像検査が、超音波(エコー)検査です。超音波検査では、こぶの内部が均一な脂肪組織で構成されているか、境界が明瞭か、血流の有無などをリアルタイムで観察することができます。脂肪腫であれば、特徴的な超音波画像(例えば、高エコーで均一な腫瘤として描出されるなど)が確認されます。より詳細な情報が必要な場合や、大きな脂肪腫、深部にある脂肪腫、あるいは悪性の可能性が少しでも疑われる場合には、CT検査やMRI検査といった高度な画像検査が行われます。MRI検査は、特に軟部組織の描出に優れており、脂肪腫の診断や、他の腫瘍との鑑別に非常に有用です。非常に稀ですが、これらの画像検査でも診断が確定しない場合や、悪性が強く疑われる場合には、手術で腫瘍の一部または全部を摘出し、病理組織検査(顕微鏡で細胞を調べる検査)を行うこともあります。
脂肪腫診断までの流れと検査内容