高齢者の足のむくみの原因として、足の血管(特に静脈やリンパ管)のトラブルも無視できません。これらの血管系の問題は、循環器内科や血管外科が専門となります。代表的な疾患と、その特徴について見ていきましょう。まず、「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」です。これは、足の静脈にある血液の逆流を防ぐための弁(静脈弁)が、加齢や長時間の立ち仕事、妊娠・出産などによって壊れたり、働きが悪くなったりすることで、血液が足の方へ逆流し、静脈内に血液が溜まってしまう(うっ滞する)病気です。その結果、静脈がコブのように膨らんだり、拡張したりします。初期には、足のむくみやだるさ、重さ、こむら返り、ほてり感といった症状が現れます。進行すると、血管が浮き出て見た目が悪くなるだけでなく、皮膚の色素沈着(茶色っぽい変色)やかゆみ、湿疹、皮膚炎(うっ滞性皮膚炎)、さらには治りにくい皮膚潰瘍などを引き起こすことがあります。下肢静脈瘤によるむくみは、夕方になると強くなり、朝になると軽減する傾向があります。次に、「深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)」およびその「血栓後遺症」です。深部静脈血栓症は、足の深い部分にある静脈に血栓(血の塊)ができる病気で、いわゆる「エコノミークラス症候群」もこれに含まれます。高齢者や手術後、長期間寝たきりの方、脱水状態の方などに起こりやすいとされています。急性期には、片足の急な腫れや痛み、皮膚の赤み、熱感などが特徴です。この血栓が肺に飛んで肺塞栓症を引き起こすと命に関わる危険な状態です。急性期を過ぎても、静脈弁が壊れてしまったり、静脈の流れが悪くなったりすると、慢性的な足のむくみやだるさ、色素沈着、潰瘍といった血栓後遺症が残ることがあります。また、「リンパ浮腫」も、足のむくみの原因となります。リンパ液の流れが滞ることによって、腕や足などの皮下組織にリンパ液が過剰に溜まってしまう状態で、がんの手術(リンパ節郭清)や放射線治療の後遺症として起こることが多いですが、原因不明の原発性のものもあります。これらの血管系のトラブルが疑われる場合は、循環器内科や血管外科を受診し、超音波(ドップラーエコー)検査などで血流の状態や血管の異常を詳しく調べてもらうことが重要です。
足の血管のトラブル?高齢者のむくみと血管外科