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顎の痛みが首や肩から?整形外科も選択肢に
片方の顎の痛みを感じるものの、口の開け閉めに直接的な問題がない、あるいは顎だけでなく首や肩にも慢性的なこりや痛みがあるという場合、その顎の痛みは顎関節自体ではなく、首や肩の筋肉の緊張、あるいは頸椎(首の骨)の問題から来ている可能性があります。このようなケースでは、「整形外科」の受診も選択肢の一つとして考えられます。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用、猫背などの不良姿勢は、首や肩周りの筋肉に持続的な負担をかけ、筋肉の緊張や血行不良を引き起こします。これらの筋肉(例えば胸鎖乳突筋や僧帽筋など)は、顎の動きに関わる筋肉とも連動しており、首や肩の筋肉の異常な緊張が、関連痛として顎の周囲に痛みを引き起こすことがあるのです。特に、朝起きた時に顎や首が痛む、夕方になると顎が重だるくなる、マッサージをすると少し楽になる、といった特徴がある場合は、筋肉性の関連痛を疑ってみる価値があります。また、加齢などにより頸椎に変形が生じる「頸椎症」や「頸椎椎間板ヘルニア」といった疾患では、首の神経が圧迫されることで、首や肩、腕だけでなく、時には顎や顔面に痛みやしびれ(放散痛)が生じることもあります。整形外科では、問診や触診で首や肩の状態、姿勢、関節の動きなどを評価し、必要に応じてレントゲン撮影やMRI検査などを行い、頸椎の状態や神経への影響を確認します。治療としては、消炎鎮痛薬や筋弛緩薬の処方、温熱療法や電気治療、牽引療法などの理学療法、ストレッチや筋力トレーニングの指導、姿勢改善のアドバイスなどが行われます。場合によっては、トリガーポイント注射(痛みの引き金となっている筋肉の硬結部に局所麻酔薬などを注射する方法)が有効なこともあります。歯科や口腔外科で顎関節症の治療を受けてもなかなか改善しない場合や、顎の痛みと同時に首や肩の症状が強い場合には、整形外科的な視点からのアプローチが問題解決の糸口になるかもしれません。一つの症状に対して、様々な原因が考えられることを理解し、多角的に原因を探ることが大切です。