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頭痛や視力障害で側頭動脈炎を疑うべきサイン
側頭動脈炎は、早期発見・早期治療が特に重要な疾患ですが、初期症状が非特異的であるため、診断が遅れることも少なくありません。しかし、いくつかの特徴的なサインに気づくことで、早期受診に繋げることができます。まず最も一般的な症状は「頭痛」です。この頭痛は、こめかみ(側頭部)を中心に、ズキズキとした拍動性の痛みや、締め付けられるような持続的な痛みとして感じられることが多いです。多くの場合、これまでに経験したことのないような新しいタイプの頭痛であり、市販の鎮痛薬ではあまり効果がないことがあります。片側性の場合も両側性の場合もあります。側頭部の動脈を触れると、硬く腫れていたり、圧痛(押すと痛む)があったり、拍動が弱くなっていたりすることもあります。次に、「顎跛行(がくはこう)」も重要なサインです。これは、食事の際、物を噛んでいると顎の筋肉(咀嚼筋)がだるくなったり、痛くなったりして、噛み続けるのが困難になる症状です。顎の筋肉への血流が悪くなるために起こると考えられています。また、「頭皮の圧痛」も特徴的で、髪をとかしたり、帽子をかぶったりする際に、頭皮に鋭い痛みを感じることがあります。そして、側頭動脈炎で最も警戒すべき症状が「視力障害」です。眼の動脈に炎症が及ぶと、急激な視力低下、視野の一部が欠ける(視野欠損)、物が二重に見える(複視)、あるいは一時的に片方の眼が見えなくなる(一過性黒内障)といった症状が現れることがあります。これらの視力障害は、永続的な失明に繋がる危険性があるため、緊急性の高いサインと捉えるべきです。その他にも、原因不明の微熱や高熱が続く、全身の倦怠感、食欲不振、体重減少といった全身症状が見られることもあります。また、前述のリウマチ性多発筋痛症を合併している場合には、首や肩、腰などのこわばりや痛みも伴います。これらの症状、特に50歳以上の方で、複数の症状が組み合わさって現れた場合には、側頭動脈炎の可能性を疑い、速やかにリウマチ科や膠原病内科、あるいは総合内科を受診することが強く推奨されます。