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側頭動脈炎の治療期間とステロイドの副作用
側頭動脈炎の治療は、主にステロイド(副腎皮質ホルモン)の内服が中心となりますが、その治療期間は長期にわたることが一般的です。初期には、炎症を速やかに鎮静化させ、視力障害などの重篤な合併症を防ぐために、比較的高用量のステロイド(例えばプレドニゾロンとして体重1kgあたり0.7~1mg/日、あるいは40~60mg/日程度)が用いられます。この初期治療により、多くの患者さんで頭痛や発熱、全身倦怠感といった症状は数日から1週間程度で劇的に改善し、血液検査での炎症反応(赤沈、CRP)も速やかに低下します。しかし、症状が改善したからといってすぐにステロイドを中止することはできません。ステロイドを急に減量したり中止したりすると、病気が再燃(再発)するリスクが高いため、症状や炎症反応の推移を見ながら、数週間から数ヶ月かけて徐々に減量していく必要があります。通常、1年から2年、場合によってはそれ以上の期間、少量のステロイドを維持療法として継続することが多いです。治療期間や減量のペースは、個々の患者さんの状態や再燃のリスク、副作用の状況などを考慮して、医師が慎重に判断します。ステロイドは強力な抗炎症作用を持つ一方で、長期間使用すると様々な副作用が現れる可能性があります。主な副作用としては、易感染性(感染症にかかりやすくなる)、糖尿病の発症・悪化、高血圧、脂質異常症、骨粗鬆症、消化性潰瘍、精神症状(不眠、興奮、うつなど)、満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満、皮膚が薄くなる、白内障、緑内障などが挙げられます。これらの副作用を予防・軽減するために、ステロイド治療中は、定期的な検査(血糖値、血圧、コレステロール値、骨密度検査、眼科検診など)が行われ、必要に応じて予防薬(胃薬、骨粗鬆症治療薬など)が併用されたり、食事療法や運動療法が指導されたりします。また、感染症予防のために、うがい、手洗い、マスクの着用なども重要です。ステロイドの副作用を恐れるあまり、自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすることは、病気の再燃を招き、かえって危険な場合があります。副作用について不安な点があれば、遠慮なく医師や薬剤師に相談し、適切なアドバイスを受けることが大切です。