ある日ふと鏡で喉の奥を見てみたら、水ぶくれのようなものができていた、あるいは喉に何かできているような違和感があるけれど、熱はない。そんな時、多くの人は不安に感じるかもしれません。大人の喉の奥に熱を伴わない水ぶくれができる原因は様々ですが、比較的よく見られるものから、稀なものまでいくつか考えられます。まず考えられるのは、物理的な刺激や軽度の炎症による「粘液嚢胞(ねんえきのうほう)」や「リンパ濾胞(ろほう)の腫れ」です。粘液嚢胞は、小さな唾液腺の出口が詰まったり傷ついたりすることで、唾液がうまく排出されずに風船のように膨らんでしまうものです。透明感のある水ぶくれ状に見えることが多く、痛みはあまり伴わないか、あっても軽度です。リンパ濾胞は、喉の粘膜下にある免疫組織の一部で、風邪の治り際や慢性的な刺激によって、イクラの粒のように赤く腫れ上がることがあります。これも熱は出ないことが多いです。また、アレルギー反応が関与している可能性もあります。特定の食べ物やハウスダスト、花粉などに対するアレルギー反応が、喉の粘膜に水ぶくれ様の腫れや痒みを引き起こすことがあります。特に、口腔アレルギー症候群(OAS)では、果物や野菜を食べた後に口の中や喉にかゆみやイガイガ感、腫れが出ることがあります。ウイルス感染症の中でも、ヘルパンギーナや手足口病は、喉の奥に特徴的な水疱(水ぶくれ)を形成しますが、これらは通常、発熱を伴うことが多いです。しかし、軽症の場合や解熱後には、熱がない状態で水疱だけが残っていることもあり得ます。稀ではありますが、良性の腫瘍(乳頭腫など)や、ごく初期の悪性腫瘍(がん)が水ぶくれのように見えることも否定できません。特に、長期間症状が改善しない、大きくなる、出血がある、飲み込みにくさや声のかすれが続くといった場合は注意が必要です。その他、口内炎の一種が喉の奥にできることもあります。いずれにしても、自己判断せずに、まずは耳鼻咽喉科を受診し、専門医に診てもらうことが大切です。