-
口内炎と間違えやすい妊娠中の口腔トラブル
妊娠中に口の中に何か異常を感じた時、すぐに「口内炎だ」と判断してしまうかもしれませんが、実は口内炎と間違えやすい他の口腔トラブルも存在します。これらを正確に見分けることは難しいため、自己判断せずに歯科医師の診察を受けることが重要です。まず、代表的なものに「妊娠性歯肉炎」があります。これは、妊娠中のホルモンバランスの変化により、歯周病菌に対する感受性が高まり、歯茎が赤く腫れたり、出血しやすくなったりする状態です。歯茎全体、あるいは特定の歯の周りが炎症を起こし、触れると痛むこともあります。口内炎のような明確な潰瘍は見られないことが多いですが、広範囲の不快感や痛みから口内炎と混同されることがあります。次に、「ヘルペス性口内炎(口唇ヘルペスを含む)」です。これは単純ヘルペスウイルスへの初感染、あるいは再活性化によって起こり、小さな水疱が多発し、それが破れてびらんや潰瘍を形成します。発熱やリンパ節の腫れ、強い痛みを伴うことが多く、一般的なアフタ性口内炎とは症状の出方が異なります。妊娠中は免疫力が低下しやすいため、ヘルペスウイルスが活性化しやすい状況にあります。また、稀ではありますが、「カンジダ性口内炎」も考えられます。これは、口腔内の常在菌であるカンジダ菌が異常増殖することで起こり、白い苔のようなものが頬の内側や舌に付着し、赤みや痛みを伴うことがあります。免疫力の低下や抗生物質の長期服用などが誘因となります。その他にも、舌にできる炎症(舌炎)や、頬の粘膜を誤って噛んでしまったことによる外傷性の潰瘍、あるいは虫歯や歯周病が進行して歯茎に膿がたまり、それが破れて潰瘍のように見えるケース(歯瘻:しろう)などもあります。これらの疾患は、それぞれ治療法が異なります。例えば、ヘルペス性口内炎であれば抗ウイルス薬が必要になる場合がありますし、カンジダ性口内炎であれば抗真菌薬が用いられます。そのため、正確な診断が非常に重要となるのです。お口の異常を感じたら、まずは歯科医師に相談し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。