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猩紅熱特有の症状と一般的な溶連菌感染症との違い
猩紅熱と一般的な溶連菌感染症(主に溶連菌性咽頭炎)は、同じA群β溶血性連鎖球菌によって引き起こされますが、症状の現れ方にはいくつかの違いがあります。特に猩紅熱は、溶連菌が産生する毒素(発疹毒)によって引き起こされる特徴的な皮膚症状が前面に出ることが大きな違いです。まず、一般的な溶連菌感染症の主な症状としては、突然の発熱(38~39℃程度)、強い喉の痛み、扁桃腺の腫れや白い膿の付着、リンパ節の腫れなどが挙げられます。また、体や手足に細かい赤い発疹が出たり、舌の表面がイチゴのように赤くブツブツになる「イチゴ舌」が見られたりすることもあります。腹痛や嘔吐などの消化器症状を伴うこともあります。一方、猩紅熱では、これらの溶連菌感染症の基本症状に加えて、より顕著で広範囲な皮膚症状が現れます。最大の特徴は、発熱後12~48時間以内に現れる、全身に広がる鮮やかな紅色の細かい発疹です。この発疹は、最初は首や胸のあたりから始まり、急速に体全体、手足へと広がります。触るとザラザラとした砂紙のような感触(サンドペーパー様皮膚)があり、特に関節の内側(肘、膝の裏、股など)や皮膚のしわに沿って濃く現れる傾向があります(パスティア線)。顔にも発疹が出ますが、口の周りだけが蒼白く見える「口囲蒼白(こういそうはく)」も猩紅熱に特徴的な所見です。また、発疹が出始めてから数日後、回復期に入ると、指先や手足の皮膚が膜のように剥けてくる「膜様落屑(まくようらくせつ)」が見られることも、猩紅熱の重要な特徴です。イチゴ舌も猩紅熱でより顕著に見られることが多いです。一般的な溶連菌感染症でも軽微な発疹が出ることはありますが、猩紅熱の発疹はより広範囲で鮮明であり、その後の落屑を伴う点が異なります。つまり、猩紅熱は、溶連菌感染症の中でも特に毒素による皮膚症状が強く現れる病型と言えるでしょう。