-
かかりつけ医が認知症診療で果たす大切な役割
認知症かもしれないと不安を感じた時、多くの人にとって最も身近な医療相談の窓口となるのが「かかりつけ医」です。かかりつけ医は、特定の専門分野だけでなく、日常的な病気の予防や治療、健康管理全般を担っており、患者さんやその家族との間に長期的な信頼関係を築いていることが多い存在です。認知症の診療においても、かかりつけ医は非常に重要な役割を果たします。まず、かかりつけ医は、患者さんの普段の様子や既往歴、生活背景などをよく理解しているため、認知機能の変化に早期に気づきやすいという利点があります。定期的な診察の中で、何気ない会話や様子の変化から認知症の兆候を察知し、適切なタイミングで専門医への受診を勧めることができます。また、認知症の初期症状は、加齢による自然な物忘れや、他の身体疾患(例えば、甲状腺機能低下症やビタミンB12欠乏症など)、あるいはうつ病などと区別が難しい場合があります。かかりつけ医は、これらの鑑別診断を行い、治療可能な原因であれば早期に治療を開始することができます。認知症と診断された後も、かかりつけ医の役割は続きます。専門医と連携を取りながら、日常的な健康管理(血圧管理、糖尿病治療、感染症予防など)を行い、認知症の進行に伴う身体的な問題に対応します。また、処方された抗認知症薬の副作用のチェックや、服薬管理のサポートも行います。さらに重要なのは、介護サービスとの連携です。かかりつけ医は、患者さんの状態に合わせて介護保険の主治医意見書を作成したり、ケアマネジャーと情報を共有したりするなど、医療と介護の橋渡し役を担います。家族からの相談に応じ、精神的なサポートを提供することも大切な役割の一つです。認知症は長期的な対応が必要となるため、信頼できるかかりつけ医との連携は、本人と家族が安心して療養生活を送る上で不可欠と言えるでしょう。