大人のADHDの診断や治療を検討する際、主な受診先として精神科と心療内科が挙げられますが、これらの診療科にはどのような違いがあり、どちらを選べば良いのでしょうか。まず「精神科」は、主に心の病気、つまり脳の機能的な問題によって生じる精神疾患全般を専門とする診療科です。統合失調症、うつ病、双極性障害、不安障害、そしてADHDや自閉スペクトラム症(ASD)といった発達障害も精神科の診療対象となります。精神科医は、薬物療法や精神療法(カウンセリングなど)を通じて、これらの疾患の診断と治療を行います。ADHDの診断においては、生育歴の聴取、心理検査、行動観察などを行い、国際的な診断基準(DSM-5など)に基づいて総合的に判断します。薬物療法としては、中枢神経刺激薬や非中枢神経刺激薬などが用いられることがあります。一方、「心療内科」は、主にストレスなどの心理的な要因が身体症状として現れる「心身症」を専門とする診療科です。例えば、ストレス性の胃炎や過敏性腸症候群、緊張型頭痛などが代表的な心身症です。心療内科医は、身体的な症状の治療と同時に、その背景にある心理的な問題にもアプローチします。ADHDそのものを主たる専門領域としている心療内科は、精神科に比べると少ないかもしれませんが、ADHDの特性によって二次的にストレス性の身体症状が出ている場合や、うつ病や不安障害などを併存している場合には、心療内科が適していることもあります。最近では、精神科と心療内科の垣根は低くなってきており、どちらの科でもADHDの相談に応じてくれる医療機関が増えています。重要なのは、診療科の名前だけでなく、その医療機関や医師が「成人の発達障害(ADHDを含む)」の診療経験が豊富かどうか、専門的な知識を持っているかどうかを確認することです。医療機関のホームページで診療内容を確認したり、事前に電話で問い合わせたりするのも良いでしょう。また、発達障害者支援センターなどの相談機関で情報提供を受けるのも有効な方法です。どちらの科を受診するにしても、信頼できる医師を見つけ、じっくりと相談できる環境を選ぶことが大切です。
精神科と心療内科、ADHD診療における違いと選び方